あまのはら富士のけぶりの春の色の霞になびくあけぼのの空 前大僧正慈円

あまのはら富士のけぶりの春の色の霞になびくあけぼのの空

 前大僧正慈円

 百首歌たてまつりし時

 新古今和歌集 巻第一 春歌上 33

「大空に立ち昇る富士の煙が春の色合の霞となってたなびいている曙の空よ。」『新日本古典文学大系 11』p.28

正治二年(1200)[後鳥羽]院後度百首「霞」。

あまのはら 富士の枕詞であるが、ここでは広大な天空のイメージが重要。

富士のけぶり 富士に煙の取り合わせは約束で、富士の壮大さ、神秘性を高める景物とされていた。

春の色 漢語「春色」の訓。

霞は普通、緑・浅緑色とされるが、慈円は「霞の袖のくれなゐ」(拾玉集)とも歌う。

霞に 霞の中に、とも解されるが、所詮霞と煙が一色に溶融した状態をいう。

参考「けふこそは春は来にけれ富士のねの煙と見るや霞なるらむ」(嘉応二年五月、藤原実国 実国家歌合)。

助詞の「の」で語を畳み上げてゆく手法は、イメージや情緒の重層をねらった新古今風の適例。

「霞」の歌。

慈円(じえん 1155-1225)平安時代末期から鎌倉時代初期の天台宗の僧。藤原兼実の弟。

千載集初出。新古今入集九十二首(西行に次ぐ第二位)。勅撰入集二百六十九首。

隠岐での後鳥羽院による『時代不同歌合』では僧正遍昭と番えられている。

小倉百人一首 95 「おほけなくうき世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖」

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