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ウルトラ怪獣列伝 72 グドン、ツインテール

 『帰ってきたウルトラマン』第5話と第6話の前後篇は本作品序盤のハイライトであるとともに、かつての怪獣映画を彷彿とさせる力作である。ここではグドンツインテールという二大怪獣を軸に、主人公郷秀樹の葛藤やMAT内部の対立劇およびその悲壮な戦いぶりがこれでもかと描写されており、内容は実に濃い。一種のパニックや災害を描いたような雰囲気もあるそんな前後篇で、ある意味ウルトラマン以上に存在感を見せたこの二大怪獣について、少しばかり語ってみよう。

 少しでも深くウルトラシリーズのことを知っている者にとっては常識と言える知識であるのだが、この二体の怪獣は非常に密接な関係にある。つまり、ツインテールグドンの餌であり、グドンツインテールの出現に呼応して、それを捕食するために出現した。怪獣がもう一匹の怪獣を捕食するというこの関係性のために、人間側は大きく振り回されることになるのだ。

 物語の流れを順に追ってみよう。まず、ツインテールの卵が工事現場から発見される。次に採石場グドンが現われる。放置されたツインテールの卵は巨大化し、ツインテールが誕生し、それを追ってグドンも地底から出現。立ち向かうウルトラマンだが、二大怪獣の挟撃に遭い時間切れとなっていったん消えてしまう。その後、ツインテールは逃走。グドンもこれを追う。しばらくして、夢の島グドンが出現。MATが攻撃するが、歯が立たない。そして、クライマックスでは埋立地グドンツインテールがほぼ同時に出現。MATが迎え撃ち、ウルトラマンも再戦を挑み、ツインテールグドンの攻撃で絶命し、グドンウルトラマンスペシウム光線の前に敗れる。だいたいこんな経過をたどっている。

 ここにおいては、あくまでも怪獣たちの行動が主であって、人間側およびウルトラマンは従の関係になっている。怪獣が現れれば人間や町を守るために行動するのが防衛組織でありウルトラマンであるのだから当然だとも言えるのだが、この前後篇に限って言うならば、その関係性があまりにも極端に表れすぎているようにも見える。先ほども書いたように、怪獣の出現と行動に対して、人間が振り回されているようにも見えるのだ。それというのも、怪獣の出現によって起こる被害とそれを攻撃した時に予測される被害が実に丁寧に描かれているからである。前者の実際の被害は前篇でのツインテールの卵が巨大化して地上に現われ、それによって地下街が被害に遭い、主人公郷秀樹の恋人である坂田アキが友人ともども地下街に閉じこめられ、なおかつ重傷を負ってしまうという描写があり、後者の予測しうる被害については、ウルトラマンがいったん敗れてMATによる通常攻撃も効果がないことがわかった地球防衛庁岸田長官によるスパイナー使用決定の場面で克明に思い描かれる(註1)。つまり、ここでは怪獣によって惹き起こされる被害が克明に描かれているのであり、それをここまで

徹底的に描いたのはおそらくウルトラシリーズ史上初だと思われる。それが出来たのは坂田兄妹をはじめとする郷秀樹の身近にいる一般人たちの描写があったからであって、たとえば『ウルトラセブン』最終回においてゴース星人の地底ミサイル攻撃で各国主要都市が破壊される描写とは明確に異なっている。あの場合は都市爆破も見るからにミニチュアセットを破壊したものであるし、東京で人々が逃げ惑うシーンにしても色調の変った妙にリアリティのないシーンであった。それに比べてグドンツインテールが暴れ回るこの前後篇は、坂田兄妹というこれまでにもレギュラー出演していたきちんと名前のある人々を軸に置くことによって視聴者側の感情移入がより容易になっており、また過去に現実にあった戦争による被害の写真を挿入することでリアリティを醸し出している。要するに、名前のあること、実際の被害の様子を見せること、それによって視聴者が思い描きやすいということになっているのだ。その点で、名前のない人々が色調の変った映像で逃げ惑うことで非現実的な感じをもたらしてしまうのとは一線を画していると言っていい(註2)。

 グドンツインテールに話を戻すと、この二大怪獣にとって人間の文明などどうでもいいことであり、ツインテールはたまたま卵が掘り出されて蘇る状況になったから蘇っただけであり(註3)、グドンも自らが常食としているツインテールの卵が現われたからこそ出現しただけである。ここにおいては人間たちは完全に蚊帳の外であり、怪獣たちの食べて食べられるという大きな食物連鎖の中で人間たちはとまどいうろたえることしかできない。ここにあるのは怪獣という地上でもっとも大きな生物が人間たちに否応なく突きつける自然の摂理というものであり、その中においては人間の文明など取るに足らないものであるのかもしれないという疑問だ。人間は普段は自らが作り上げた文明の上で安穏と暮らしているが、それもひとたび大自然の脅威にさらされればいっきに崩壊しかねないものであることを、教えてくれている。つまり、怪獣によって起こる被害は地震や台風などの大自然によって起こる災害のメタファーとなっており、怪獣を大自然の象徴として規定することで、人間文明への疑義を呈するという構図になっている。ウルトラシリーズにおいてそれが最初に大きな規模で描かれたの\xA4

呂Ľ修蕕咩悒Ε襯肇薀泪鵝拌\xE826〜27話のゴモラであろうが、その後、このツインテールグドンを通した描写を経て、『ウルトラマンタロウ』でのバードン3部作に至るというゆるやかな流れがあるのではないだろうか(註4)。ゴモラツインテールグドンバードン、ケムジラ、いずれも地球出身の地球の大自然という大きな環の中から出て来た怪獣たちであり、彼等が人間が作り上げた都市の中で縦横無尽に暴れ回ることで、人間文明と相反する大自然の脅威というものを繰り返し描いていたようにも思える。また、ツインテールグドンに関してのみ言うならば、『帰ってきたウルトラマン』という作品自体がもともとは「異常気象や地殻変動、人間たちの文明によって惹き起こされた公害などによって眠っていた怪獣たちが復活した」という設定を持って始まった作品であり、シリーズ開始当初から「地球の自然と人間の文明」という対比構造が提示されていた。そのような構造が設定段階であったがゆえに必然的に作られた怪獣たちであったと言える。ツインテールグドンの物語は、言わば『帰ってきたウルトラマン』序盤において作られるべくして作られたものなのだ\xA1

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 だが、結局はウルトラシリーズが人間側の視点から語られる物語である以上、大自然も、それを象徴する怪獣たちの脅威も、人間側によって駆逐されることで終る。グドンツインテールの物語においては、坂田アキの重傷、郷秀樹のMATを辞めてでも愛する者を守ろうとする決意、首都東京を焦土にしてまで怪獣たちを撃滅しようとする無謀な作戦に対抗するためにMATの面々が泥だらけになってでも戦う姿を見せつけることという、人間たちの払った犠牲と決死の覚悟によって、ようやく大自然を追い返すことに成功した。いつどんな時であっても、怪獣という自然災害に立ち向かうにはそれだけの覚悟が必要なのだということを教えてくれているかのようだ。大自然に対して時に無頓着で傲慢なふるまいを見せる人間たちだが、この時だけは地球防衛庁上層部のみがそれを見せただけで、主要登場人物たちは自ら努力し耐え忍ぶことで危機をはねのけることに成功する(註6)。だが、二大怪獣に象徴される大自然の脅威はいまだ残ったままであり、大自然対人間という図式の問題は先送りされたままなのだ。

(註1)スパイナーは『ウルトラセブン』第28話に登場した高性能火薬と同じ名称だが、ここでは完全に兵器としての扱いである。それは小型水爆と同じぐらいの威力があり、東京で使用すれば東京一帯は廃墟になるであろうと予測された。また、その予測の際に挿入される白黒写真は日本の戦時中に実際にあったアメリカ軍による東京大空襲や広島への原爆投下などの写真が使われており、妙にリアリティがある。坂田健による戦時中の思い出を語る場面があることも相俟って、そういえば『帰ってきたウルトラマン』放映時点では日本の敗戦からまだ二十六年しか経っていないのだなということに、いまさらながら気づかせられる。

(註2)『ウルトラセブン』最終回では、主人公のモロボシ・ダンが、台詞は大いにあるもののこの回だけ単発で出て来る子供の家に身を潜めていて、実際の被害状況から距離を置いてしまっているのも大きい。つまり、物語の中心たるべき主人公が渦中にないのである。もちろんこれは最終回というウルトラセブンが地球を去るという特殊な状況下でもあるため、一概には比べられないのだが、『帰ってきたウルトラマン』第5〜6話で主人公郷秀樹が被害に遭って怪我をしたアキの傍に付き添っている(つまりは、被害状況の傍にいる)のとは対照的だ。

(註3)劇中描写を見ると、最初に工事現場から発見されたツインテールの卵を坂田次郎が「怪獣の卵かもしれない」ということでMATに報告し、郷と岸田の両隊員が駆けつけ、岸田はそれを「こりゃ岩石だな」と一蹴し、卵に対してMATシュートを撃つということになっている。岸田は「念のためMATシュートで焼いておきました」と言うが、その直後から(郷のウルトラマンならではの超感覚ゆえに聞き取れる)心臓の鼓動音が聞こえてくる。つまりは、岸田がMATシュートを撃つことで眠っていた卵が覚醒したようにも取れる描写だ。ということは、MATシュートを撃たなければ卵は覚醒しなかったのかもしれず、それを追ってグドンも現れなかったのかもしれないということになり、ある意味これは人災であるとも言いうる。

(註4)考えてみれば、ここに挙げた物語はいずれも前後篇以上のボリュームを持っており、バードンに関しては3部作になっている。つまり、大自然対文明という構図を徹底して描くためには、それぐらいの分量が必要であるということなのだろうか。

(註5)もちろん、よく知られているように、『帰ってきたウルトラマン』という作品は地球怪獣から宇宙怪獣へ、そして宇宙人へと、敵の属性が段階的に変化していったのだが、それはこの作品が主人公郷秀樹の成長物語であるという点を最も重視していたからであって、そのために敵の属性を変えていかざるをえなかったのだとも言いうるのだが、シリーズ開始から間もない第5〜6話の時点では「異常気象や地殻変動、人間の文明が惹き起こす公害などによって、眠っていた怪獣たちが復活した」という当初の設定はまだ有効であった。

(註6)坂田健をはじめとする坂田兄妹は避難命令を無視してあえて自宅に留まることで無言のプロテストを示したが、このような悲壮なまでの姿勢も人間の取りうる最上の態度であるのかもしれない。

(註7)画像左がツインテール、右がグドン。なお、ツインテールは立場的にはグドンに捕食される弱者ではあるものの、ツインテールの卵が目覚めなければグドンは現れなかったのかもしれず、そう考えると、ツインテールが物語を主導する立場にあり、実はツインテールこそがこの前後篇の隠れた主役であるのかもしれない。また、ウルトラシリーズのファンの間でよく知られている(おそらく当時の学年誌が発祥と思われる)事項に「ツインテールはエビのような味がする」というものがある。

地底怪獣グドン

身長 50m

体重 2万5千t

出身地 奥多摩の第二採石場

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 スペシウム光線

登場 『帰ってきたウルトラマン』第5話「二大怪獣東京を襲撃」、第6話「決戦!怪獣対マット」

古代怪獣ツインテール

身長 45m

体重 1万5千t

出身地 新宿の地下

能力 しっぽのムチ

弱点 グドンが天敵

登場 『帰ってきたウルトラマン』第5話「二大怪獣東京を襲撃」、第6話「決戦!怪獣対マット」

地底怪獣グドン

身長 50m

体重 2万5千t

出身地 工事現場

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 メビュームブレード

登場 『ウルトラマンメビウス』第2話「俺達の翼」

地底怪獣グドン

身長 50m

体重 2万5千t

出身地 山中

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 ボガールによって捕食

登場 『ウルトラマンメビウス』第9話「復讐の鎧」

プロトマケット怪獣グドン

身長 50m

体重 2万5千t

出身地 Crew GUYS JAPAN データベース内

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 ゼットンの火球

登場 『ウルトラマンメビウス』第27話「激闘の覇者」

地底怪獣グドン

身長 50m

体重 2万5千t

出身地 惑星ボリス

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 ネロンガの電撃

登場 『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』第3話「透明怪獣襲撃」

地底怪獣グドン(SD)

身長 14cm〜50m

体重 150g〜2万5千t

能力 ムチ状の両手、鋭い歯

弱点 キングジョーランチャー

登場 『ウルトラマンギンガS』第4話「強さの意味」

古代怪獣ツインテール

身長 45m

体重 1万5千t

出身地 深海

能力 素早い動き、しっぽのムチ

弱点 メビュームシュート

登場 『ウルトラマンメビウス』第6話「深海の二人」

古代怪獣ツインテール

身長 45m

体重 1万5千t

出身地 山中

能力 しっぽのムチ

弱点 ボガールによって捕食

登場 『ウルトラマンメビウス』第9話「復讐の鎧」

古代怪獣ツインテール

身長 45m

体重 1万5千t

能力 しっぽのムチ

弱点 リトラの火球とレイの銃

登場 『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』第6話「もう一人の怪獣使い」